今、世界で起きている「海洋プラスチック」の問題

洋服から自動車、建設資材に至るまで、私たちの生活のあらゆる場面で利用されているといっても過言ではないプラスチック。

手軽で耐久性に富み、安価に生産できることから、製品そのものだけでなく、ビニールや発泡スチロールなどの包装や梱包、緩衝材、ケースなどにも幅広く使われています。

しかし、プラスチックの多くは「使い捨て」されており、利用後、きちんと処理されず、環境中に流出してしまうことも少なくありません。手軽に使える分、手軽に捨てられてしまう、そうした面もあるといえます。

そして環境中に流出したプラスチックのほとんどが最終的に行きつく場所が「海」です。
プラスチックごみは、河川などから海へと流れ込むためです。

既に世界の海に存在しているといわれるプラスチックごみは、合計で1億5,000万トン(※1)。そこへ少なくとも年間800万トン( ※ これは毎分ゴミ収集車1台分が海に流されているということになります)が、新たに流入していると推定されています(※2)。

海洋に流入する海洋プラスチックは毎分ゴミ収集車1台分のプラスチックが海に流されているということになります。

こうした大量のプラスチックごみは、既に海の生態系に甚大な影響を与えており、このままでは今後ますます悪化していくことになります。

例えば海洋ごみの影響により、魚類、海鳥、アザラシなどの海洋哺乳動物、ウミガメを含む少なくとも約700種もの生物が傷つけられたり死んだりしています。このうち実に92%がプラスチックの影響、例えば漁網などに絡まったり、ポリ袋を餌と間違えて摂取することによるものです(※3)。プラスチックごみの摂取率は、ウミガメで52%(※4)、海鳥の90%(※5)と推定されています。

漁網に絡んで溺死したシロカツオドリ(ノルウェー)
© Nils Aukan / WWF

漁網に絡んで溺死したシロカツオドリ(ノルウェー)

このようなプラスチックごみは、豊かな自然で成り立っている産業にも直接的、間接的な被害を与え、甚大な経済的損失をもたらしています。例えば、アジア太平洋地域でのプラスチックごみによる年間の損失は、観光業年間6.2億ドル、漁業・養殖業では年間3.6億ドルになると推定されています(※6)。

一度放出されたプラスチックごみは容易には自然分解されず、多くが数百年間以上もの間、残り続けます(※7)(※8)

海洋ごみが完全に自然分解されるまでに要する年数。上記の内、アルミ缶以外は全てプラスチックが主成分の「海洋プラスチックごみ」

海洋ごみが完全に自然分解されるまでに要する年数。
上記の内、アルミ缶以外は全てプラスチックが主成分の「海洋プラスチックごみ」

これらのプラスチックごみの多くは、例えば海岸での波や紫外線等の影響を受けるなどして、やがて小さなプラスチックの粒子となり、それが世界中の海中や海底に存在しています(※9)。5mm以下になったプラスチックは、マイクロプラスチックと呼ばれています。

マイクロプラスチックは、日本でも洗顔料や歯磨き粉にスクラブ剤として広く使われてきたプラスチック粒子(マイクロビーズ)や、プラスチックの原料として使用されるペレット(レジンペレット)の流出、合成ゴムでできたタイヤの摩耗やフリースなどの合成繊維の衣料の洗濯等によっても発生しています (※10)。

海洋に投棄されたプラスチックゴミはやがて微細なマイクロプラスチックとなり、食物連鎖を通じて多くの生物に取り込まれています

製造の際に化学物質が添加される場合があったり、漂流する際に化学物質が吸着したりすることで、マイクロプラスチックには有害物質が含まれていることが少なくありません(※11)。そして、既に世界中の海に存在するマイクロプラスチックが海洋生態系に取り込まれ(※12)、さらにボトル入り飲料水や食塩などに含まれている可能性が指摘されています(※13)(※14)。

マイクロプラスチックについては、人を含む生物の身体や繁殖などに、具体的にどのような影響を及ぼすのか、詳しいことはまだ明らかにされていません。しかし、本来自然界に存在しない物質が広く生物の体内に取り込まれた結果を、楽観視することは許されません。

拡大する問題とその原因 特にアジアの課題

プラスチックの年間生産量は、過去50年で20倍に増大しました (※2)。
しかし、これまでにリサイクルされたのは、生産量全体のわずか9%に過ぎません(※15) 。
そして、前述しましたように、これらのプラスチックは自然界の中で、半永久的に完全に分解されることなく存在し続けます。

これまで生産されたプラスチックの分布状況。再利用されたのは全体の9%に留まる(※15)

これまで生産されたプラスチックの分布状況。再利用されたのは全体の9%に留まる(※15)

この問題になっている海洋プラスチックの8割以上は、陸上で発生し海に流入したもの(※1)。特に多いのが、使い捨て用が中心の「容器包装用等」。この用途に使われるプラスチックは、世界全体のプラスチック生産量の36%、世界で発生するプラスチックごみの47%を占めていると考えられます(※16)。

世界と国内でのプラスチックの生産量と用途別の生産割合。「容器包装等」が最も多い。

世界と国内でのプラスチックの生産量と用途別の生産割合。「容器包装等」が最も多い。

海で発生する海洋プラスチックは、陸上からの物と比較すれば多くありません。しかしながら、やむを得ず放棄されたもしくは投棄された漁具(ALDFG: Abandoned, lost or otherwise discarded fishing gear)の多くがプラスチックでできたものであり、特に深刻な問題を引き起こしています。

その一例が、「ゴーストネット」と呼ばれる、廃棄された漁網です。例えば「流し網」などは何キロにもおよぶ長さを持つ漁網ですが、主にプラスチックでできています。これら漁網が意図的であるかどうかに関わらず、一旦海に廃棄されると、やはり分解されることなく長い間海に残り続けます。そして、アザラシや海鳥、ウミガメなどに誤って絡まり、これらの動物がひどい場合には何年間も苦しんだりして命を落とす問題が、世界各地の海で頻発しているのです。

漁網に絡まり溺死したオサガメ(サントメ・プリンシペ)
© Michel Gunther / WWF

漁網に絡まり溺死したオサガメ(サントメ・プリンシペ)

「海洋プラスチック」2050年の予測

ダボス会議で知られる世界経済フォーラムは、現在、海へ流入している海洋プラスチックごみは、アジア諸国からの発生によるものが、全体の82%を占めるとしています(※2)。
環境に負荷をかけた、持続可能とはいえない経済発展が続く限り、この海洋プラスチックの問題も、今後さらに拡大すると考えられています。
同フォーラムは、2050年にはプラスチック生産量はさらに約4倍となり、「海洋プラスチックごみの量が海にいる魚を上回る」というショッキングな予測を発表しています(※2)。

さらに、プラスチックの原料となる原油の使用は、地球温暖化の主要な原因の一つ。
プラスチックの生産拡大傾向がこのまま続くと、パリ協定の目標である「2℃未満」を達成するときに許される2050年の排出量の約15%を、プラスチックの生産および焼却時の排出が占めると試算されています(※2)。

2050年には海洋プラスチックゴミは魚の量を上回り、消費する原油の20%がプラスチック生産に使用されると予測されている。

ケニア・ワタミュビーチに打ち寄せられたプラスチックゴミ
© Greg Armfield

ケニア・ワタミュビーチに打ち寄せられたプラスチックゴミ

日本として取り組むべきこと

日本はプラスチックの生産量で世界第3位(※17)。
特に1人当たりの容器包装プラスチックごみの発生量については、世界第2位(※16)と、この問題に国際的な責任を持たなければならない立場にあります。
実際コンビニの普及もあり、国内で年間に流通するレジ袋の枚数は、推定400億枚(※18)で、一人当たり一日約一枚のペースで消費されています。また、ペットボトルの国内年間出荷は227億本に達します(※19)。

日本では廃棄されるプラスチック(廃プラ)の有効利用率が84%と特に進んでいるとされていますが、全体の57.5%は、燃焼の際にエネルギー回収をするものの燃やす「サーマルリサイクル」という処理方法に頼っています(※20)。これはつまり、化石燃料を燃やし、CO2排出しているということですので、今後ますます深刻化する地球温暖化への対策まで含めた視点で見たときに、とても資源が有効かつ持続可能な方法で利用されているとは言えません。

廃プラの処理状況

廃プラの処理状況。
マテリアルリサイクル:廃プラを原材料としてプラスチック製品に再生
ケミカルリサイクル:廃プラを化学的に分解するなどして、化学原料に再生
サーマルリサイクル:廃プラを固形燃料にしたり、焼却して熱エネルギーを回収

また、日本は年間150万トンものプラスチックくずを「資源」という位置づけで中国を中心にアジア諸国に輸出していました(※21)。しかし、世界最大の輸入国である中国がリサイクル処理に伴う環境汚染などを理由に2017年から輸入規制を始めたことで、日本のプラスチックごみの行き場がなかなか見つからないといった問題も起こっています。しかしプラスチックくずの海外輸出については、プラスチックごみの処理を、処理体制が整っていないアジアの途上国に実質的に押し付けることにより、アジアからの海洋プラスチックごみ流出を加速させることにつながるとして懸念する声もあります。他の輸出先を探すのではなく、輸出すること自体を見直すべきではないでしょうか。

海洋プラスチックの問題は、ごみの廃棄やリサイクルの側面だけでなく、自然そのものへの影響についても深刻です。
日本沿岸で回収された漂着ごみは年間約3万トンから5万トンにも及びます(※22)。モニタリング調査によると、漂着ごみにおいて、海外から流れ着くものを含めたボトルや漁網等プラスチック類が占める割合は個数をベースにすると65.8%(※21)。また、日本近海でのマイクロプラスチックの濃度は、世界平均の27倍にも相当するという調査結果もあります(※23)。

日本の海岸に漂着したごみの量と内訳。漂着ごみの大半を漁具を含むプラスチック類が占めている。また、日本海側で漂着が多いのが分かる。

日本の海岸に漂着したごみの量と内訳。
漂着ごみの大半を漁具を含むプラスチック類が占めている。また、日本海側で漂着が多いのが分かる。

海洋プラスチックの問題を解決していくうえでは、法律の整備に基づいた生産・使用削減やリサイクルシステムの改良などが重要な手立てになりますが、そうした政策面での改善は、日本はまだ遅れを取っています。2018年6月にカナダで開催されたG7シャルルボア・サミットにて、プラスチックの製造、使用、管理及び廃棄に関して、より踏み込んで取り組むとする「G7海洋プラスチック憲章(※24) (仮訳※25)」に、日本とアメリカだけが署名しなかったことが、それを示す顕著な例となります。

問題の解決に向けて

プラスチックごみの問題を解決するために必要なことの基本は、いわゆる3Rです。

  • リデュース(Reduce)=出すごみの総量を減らすこと
  • リユース(Reuse)=再利用すること
  • リサイクル(Recycle)=再生産に回すこと

これを徹底することが、海に流入するプラスチックを減らすことにつながります。

とりわけ、プラスチック生産量の多い日本の場合、重要となるのは生産・使用を「リデュース=減らすこと」。
特に、日本でも廃プラの約半分を占める「使い捨て用が中心の容器包装等のプラスチック」(※20)を減らすことで、最も効果的なリデュース推進が可能となります。

世界では、使い捨てプラスチックの代表格であるレジ袋の使用規制が、2018年2月の時点で45か国以上で発効、若しくは、議会承認を受けています。課税・有料化を決めた国を含めると60か国に上ります(※16)。

日本でも神奈川県が、鎌倉市の海岸に打ち上げられたシロナガスクジラの胃の中からプラスチックごみが発見されたことをきっかけに、2030年までのできるだけ早期に、リサイクルされない、廃棄されるプラごみゼロを目指すとの「かながわプラごみゼロ宣言」を行いました(※26) 。
今日本では、これら先進事例に学びながら、負の遺産ならぬ負のプラスチックごみを未来の世代にのこすことのないよう、取り組みの強化が求められています。

日本で取り組むべきこと:使い捨て用プラスチックを中心としたリデュース(削減)

大量のプラスチックが日常的に利用される暮らしが当たり前になっている日本は、1人当たりの容器包装等プラスチックの発生量が世界で2番目に多く、世界第3位のプラスチックの生産国として、世界の海洋プラスチックごみ問題の一因を作りだしていることは事実です。

使用量を削減するための代替品として、バイオマスプラスチックや、生分解性プラスチック、紙などの利用への移行が考えられます。
だだ、これらについては、本当に環境への影響がないといえるのか、また紙のように森林の破壊につながる可能性のある資源については、その持続的な利用が担保できる状態での代替品への移行が可能なのかを、慎重に検討していくべきと考えます。

例えばヨーロッパでは、オキソプラスチックという酸化型生分解性プラスチックが、潜在的にマイクロプラスチックによる環境汚染の原因となる、非常に小さな粒子に分解されるとして、使用規制に向けた動きが進んでいます(※29)。

海外と同様日本でも、廃棄されるプラスチックの約半分がレジ袋やペットボトルを含めた「容器包装等/コンテナ類」として使われているもの。これらの多くが使い捨てされています。

プラスチックに代わる代替品が十分に確立されていない中で、削減余地の大きい「使い捨てプラスチック」の生産・使用を減らしていくことこそが、日本でも優先的に取り組むべき課題として重要なものであるとWWFジャパンは考えています

日本で取り組むべきこと:サーマルリカバリーを含む燃焼処理からの脱却

日本では、プラスチックのリサイクル、有効利用が進んでいるとする意見が聞かれますが、実はこの中身には、焼却による「熱エネルギーとしての再利用」が多く含まれています。

これは、「サーマルリカバリー」「サーマルリサイクル」「熱回収」といった呼称で呼ばれますが、プラスチック資源としての再利用を目指した取り組み(マテリアルリサイクル)とは根本的に異なります。

地球温暖化が全人類の問題となっている中で、原油由来のプラスチックの燃焼処理を推進することは、今世紀後半の実質的な温室効果ガス排出ゼロを目指すパリ協定の理念、そして、2050年までの温室効果ガス排出量80%削減を目指す日本の姿勢とも明らかに矛盾するものです。

ヨーロッパ他の先進国では、サーマルリカバリーは、リサイクルとはみなされていません(※30)。したがって、日本政府がサーマルリカバリーを推進するかのような文脈でプラスチックの資源循環戦略を進めるとした場合、国内外で受け入れられない可能性もあります。

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